労働相談事例集

当、労働相談センターには、年間300件近い相談が寄せられます。
その中から、特徴的な事例を紹介します。
「あるある」「こんなこともあるんだ」様々な事例があります。
悩んでいるのは、あなただけではありません。
味方になります。お気軽にお電話ください。
事               例 
2012年 
 8月  今回は、サプリメント・健康食品等の製造・通販会社勤務の女性が解雇された事例を紹介します。
 雇用契約では勤務場所は会社内。従事する業務は事務職でした。しかし、この他にも契約業務とはまったく関係のない社長宅の掃除や洗濯、料理作りなど家政婦のようなことを日常的に同僚二人とともにやらされてきました。
 当番になっていた同僚が欠勤しその日の家事労働ができなかったことに社長が激高。相談者がターゲットにされ解雇通告。直後に体調を崩し、欠勤届を出して病院で治療をうけました。
 しかし、この時の欠勤届も受け取っていないとうそぶかれ、無断欠勤扱い。これも解雇理由にされました。
 解雇後に会社から届いた解雇理由書には、上記二つの理由ではなく「会社の成績不良」のためと書かれていました。
 しかし、在職中(解雇前)の夏季賞与も例年通り、支給されるなど経営悪化(の理由)などは考えられません。あまりのひどさに相談者は、納得がいかないものの嫌気がさし、争わずに退職することになりました。

 今回の解雇事例では正当な解雇理由が見つかりません。違法・不当解雇の疑いが濃厚です。契約外の家事労働を強要するなど雇用契約違反も甚だしく、未だ未組織職場で存在する前近代的な労働者を使用人扱いをするという典型例です。
 未組織職場での組織化が急がれます。


7月

 今回の事例はパート労働者に対する年休付与差別問題です。
 公立保育園で保育士として勤務するAさんの雇用形態は有期雇用で短時間パートです。雇用契約は空白(期間)はなく、6カ月ごとに反復更新し今年で5年目です。職場の状況はほとんどが正規雇用(同一労働)の人たち(保育士)です。
 年休が取れない理由を聞くと、雇用主(教育委員会)から「パートには年休はありません」と言われました。雇用の調整弁として取り扱われていいます。
 Aさんは正規職員の年休取得日の代替要員の役割を果たす一方、自身は年休が取れずに働いてきていたのです。
 当然のことですが、有期雇用・短時間(パート)労働者にも労働基準法が適用されます。
 労働基準法(39条)はパートタイム労働者の年休(付与)について、フルタイム労働者(正規雇用)と原則として同様に扱うことと規定しています。
 つまり、雇入れ時から6カ月経過をすればパート時間(週勤務日数)に応じて年休が付与されなければなりません。
 また、パート労働法は、通常の労働者と同じ働き方をしている者にはその待遇について差別してはならないと規程しています。
 今回のケースのように「パートには年休はありません」は、雇い主の身勝手な理屈で違法です。
 問題解決にむけ組合加入を勧めるとともに労働基準監督署への申告をアドバイスしました。


 6月


 今回はきわめて悪質な賃金未払いの相談事例を紹介します。
 @アルバイトで働いている息子のことでと、親御(母)さんからの相談。雇用主は、解体業の下請け業者(自称)。お母さんの話では、きちんとした雇用契約(具体的な賃金・労働条件等の明示)がなされないもとで、息子さんは、今年1月から、仕事をしなければとの一心で、建築物等の解体現場で働いてきているとのことです。
 「息子が一生懸命に働いているのに、まともに賃金が支払われない」という、息子のことを気遣う母親からの気持ちのこもった怒りの相談です。
 毎月の賃金は、全額ではなく一部しか支払われず、前述の雇用主も認めている同年四月までの未払額は五十万円程度とのことです。
 しかし、実際の雇用(賃金支払者)当事者関係が疑われます。雇用主とみられる業者は、元受けの解体(業)・請負会社に労働者を送り込む口入れ屋(手配師)・あっせん役の疑いありです。
 この相談からは、雇用主を装う業者が、元請け会社から、労働者あっせん料を受け取り、賃金相当分(額)を当該労働者に支払っていないという実態が浮かび上がります。
 もちろんこのような行為は、労働基準法違反と労働者派遣法違反にあたります。
 この偽装雇用主とみられる業者は、賃金未払いを認めていることから、県労連・労働相談センターとして、@この業者に対し、労働債権(賃金未払い)の確認を書面でしておくこと、Aそのうえで、労働基準監督署への申告や賃金支払い勧告等の行政指導要請ができること、B民事請求訴訟も提起できること、Cまた、息子さんが県労連加盟労組に組合加入をして、実際の雇用主と直接の団体交渉を通じて、未払賃金の支払いを要求し、問題解決をはかりましょうとアドバイスしています。


 5月
  今回は、セルフサービス・GSで働く男性の相談事例を紹介します。
 この男性は、ハローワークの紹介で就職。雇用条件は6カ月間の有期雇用契約で、時間給は800円。雇用時の勤務時間は、午前8時〜午後4時まで。
 しかし、会社から突然、夜勤(午後8時〜翌日8時まで)に変更され、賃金は800円のまま。
 勤務は12時間という長時間拘束のうえ、時間外、深夜割増賃金未払いの疑いが濃厚です。
 労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)では、時間外、深夜(午後10時〜午前5時まで)労働をさせた場合は2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
 両方が重なれば5割増しです。問題解決にむけ、組合加入を勧め相談を継続しています。





1月、
2月

 1月〜2月の労働相談を通じて、高知一般労組に2人(いづれも女性)が、医労連には2人(いづれも男性)がそれぞれ個人加盟しました。
 特徴的な相談事例の紹介。高知市内の夜間高校に働きながら学ぶ男性(30才)からの相談。
 ハローワークの職業紹介で鉄工所に就職したが、「求職募集欄」の雇用条件では、期間の定めのない正規雇用となっていたのに、採用されて1ケ月後に会社から交付された労働条件通知書には、一年雇用の契約社員とされていた。
 また、残業しても残業代が支払われないというものでした。
 このような納得のいかない状態で不満を持ちながら働いている中で、社長から、「仕事がないから明日でやめろ」と、突然、解雇通告がなされた。二重三重に労働者を痛みつけるというひどい内容の相談でした。
 アドバイスとしては、社長が求人募集条件に反し有期雇用にしたことの不当性や理不尽さを指摘したうえで、不払残業代の請求は退職後でも2年間に遡って請求できること、何よりも一方的な解雇は許されないこと。しかも、雇用契約期間中の解雇であり、違法な解雇は明らかなこと等を指摘。全面支援する、断固として辞めない意思表示をしてはね返そうと助言しました。
 相談後に相談者は労働相談センターのアドバイスをもとに勇気を持って社長に対し解雇の撤回を求める抗議の訴えをし、解雇を撤回させています。
 センターからは「よかったですね」と伝え仕事と学びを両立させてくださいと激励し、労働組合に加入してがんばりましょうと呼びかけています。

 2011年
 12月  特徴的事例の紹介。
 ―金属制食器や刃物などを販売する会社で、事務職員として働いてきた女性からの相談。
 この会社で7年間働いてきましたが、会社業務で自損事故を起こしたことや事実に反するミスを理由にされ解雇と同様の取り扱いをうけて退職に追い込まれました。
 会社は、中小企業退職金共済制度に加入しており、退職後に同共済制度事業本部から退職金が私の預金口座に振り込まれました。
 しかし、会社は突然、「貴方は退職金を受け取る資格がない」などと中傷され、退職金を会社に全額返還せよと言ってきました。
 たいへん困惑しています。返還しなければいけないですか。との相談。退職金は、性格上、後払いの賃金であり、返還する必要はありませんとアドバイスしました。
 12月6日、7日の全国一斉「反貧困!何でも労働相談ホットライン」では、解雇や賃金未払い、パワハラなどをめぐる相談17件が寄せられました。
 ホットラインを通じてタクシー会社から不当に解雇された男性( タクシー運転手・51歳)が、自交総連加盟し、予告解雇手当請求、残業代支払いなどを求めるためにがんばる決意をしています。